健康のために大切なことは3つ。タバコを吸わない、肥満にならない、ワクチンを打つ。

私は内科医として、日々患者さんの健康を管理する仕事をしています。診療をする中で 「この病気は防ぐことができたのに」、「こうすれば病気が悪くならないのに」と感じることがあります。せっかく健康に対する意識が高いのに、正しい情報が伝わらないことで、もったいないと感じることもあります。本サイトでは内科医がみなさんに伝えたい、本当に健康のために必要なことはなにかについて解説します。

大きな病気になると健康を取り戻すことは難しい。予防することがとても大切。

私はこれまでいくつかの急性期病院で、救急外来やICU(集中治療室)で呼吸器内科医として従事し、重症肺炎の人工呼吸管理、肺がんの治療、緩和ケアなどに携わってきました。病院に入院するような大きな病気になると、元の通りに元気になって退院できる方もいる一方で、残念ながら亡くなっていく方も多く、また命が助かったとしても障害を負い元の生活には戻れなくなる方も多くいます。

そのような場面に遭遇するたびに、「この人を救うためには、どうすればよかったのか」と考えてきました。

多くの方は病院に来る前にすでにかなり体を悪くしていて、治療を頑張ったとしても以前の生活に戻ることが難しくなっていることが多いと感じます。そのような経験から病気になってから治療を頑張るよりは、防げる病気を防ぐ、病気になっても悪化させないことがとても大切だと強く考えるようになりました。

現在、私はフリーランス内科医として、いくつかの病院で内科外来や健診業務など、患者さんと一緒に健康と作っていく仕事を行っています。その中で感じている健康のために本当に必要な事はなにかを紹介していきたいと思います。

健康を維持するために注意したい病気は3種類。がん、生活習慣病、感染症。

日本人の死因の第1位は悪性新生物(がん)第2位は心疾患(心筋梗塞や心不全など)、第3位は脳血管疾患(脳梗塞や脳出血)、第4位は老衰で第5位は肺炎です1)

このうち、心疾患と脳血管疾患のほとんどは生活習慣病が原因となります。生活習慣病とは具体的には、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、です。これらはすべて、長い時間をかけて血管を傷つけ、硬くします。これを「動脈硬化」といいます。動脈硬化がすすんだ血管は詰まりやすくなったり、時には血管が破れて出血する原因になります。

心臓がうまく働くように心臓の筋肉に血流を届ける血管が詰まることによっておきる病気が心筋梗塞です。また、脳に血流を届ける血管が詰まることによっておきる病気が脳梗塞です。また脳内の血管が破れて出血する病気が、脳出血です。いずれも生活習慣病が原因になります。

まとめると、命にかかわる病気は、がん、生活習慣病、感染症の3種類にまとめられます。これらの3つを予防していくことが健康を維持するためになにより大切です。

健康のために必要なことは、タバコを吸わない、肥満を避ける、ワクチンを打つ、の3つ。

病気を予防したり、悪くならないようにすることについては、様々な情報が溢れています。その中には正しくない事やあまり有効でない事が健康的と言われるのも多く目にします。

もっともらしい情報や商品で金儲けをたくらむ人(中には医師も)はたくさんおり、健康への不安に付け込むように怪しい治療や商品に時間とお金を浪費させられ、時には健康を害することもあるかもしれません。

健康食品やサプリメントなどで本当に健康に役立つものないと思います。一部の病気に多少の効果があることもあるかもしれませんが、健康を害する病気はいくつもあり、万能なものはありません。あれば私もみなさんにすすめたいし、自分でも手に入れようとするでしょうが、今のところそういうものは知りません。 「これだけやってれば体は元気!」みたいなものはないと思います。

本当に、健康のため大切なことは3つ、①タバコを吸わないこと、②肥満にならない、③ワクチンを打つこと、です。「なんだそんなことか・・・つまらない。もっと他に簡単なものはないの?」と思った方は要注意です。金儲けしたい人にとっては「いいカモ」かもしれません。

なぜ?これら3つの事が健康にとって大切かというと、これらはすべて、がん、生活習慣病、感染症の予防に役に立つからです。これらを疎かにしては、他に何をしても病気を予防し、健康を維持することは難しいと思ってください。

タバコはがん、生活習慣病、感染症すべてに悪影響。

タバコは約20種類もの「がん」のリスクになることが分かっています。

そのなかでも特に強いリスクとなるのは、肺がんです。肺がんは、最も多くの方が亡くなられるがんで、年間約7万5千人が命を落としています(令和元年度)。喫煙者では肺がんを発症するリスクは非喫煙者と比べて3倍以上であり、非常に強い関係があります。

また、タバコに含まれるニコチンには血管を強く収縮させる作用があり、高血圧症の原因となります。喫煙すると血中のHDLコレステロール(動脈硬化を防いでくれる善玉コレステロール)は減少します。糖尿病発症のリスク因子であることも知られています。

タバコに含まれる有害物質は、気管支粘膜を障害し、気道からウイルスや細菌を排除する機能を阻害します。喫煙をつづけることで肺炎になりやすくなります。最近の話題では、喫煙は新型コロナウイルス感染症を悪化させる最大のリスク因子の一つであることも分かっています。

まとめると、タバコは①がん、②生活習慣病、③感染症のすべてに悪影響を与えて、健康を損ないます。タバコを吸いながら健康を維持することはとても難しいと思います。しかしながら、禁煙するとこれらの悪影響は取り除くことができます。特に、元気な若い間に禁煙することで、タバコを吸っていない人と同じくらい健康になることもできます。

健康づくりの一歩はまず禁煙から始めることをおすすめします。

メタボ=内臓脂肪のプールを溢れさせている。

メタボリックシンドローム(メタボ)という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、肥満はやはり健康上の問題です。

メタボとは単に太っているということを指す言葉ではありません。メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積により、血圧、脂質代謝異常、血糖の異常を発症し、動脈硬化性疾患を発症しやすい状態のことをいいます。動脈硬化性疾患とは心筋梗塞や脳梗塞などを指します。

内臓脂肪は、過剰に取り過ぎたカロリーを脂肪に変えてため込むプールのような役割を果たします。内臓脂肪が過剰に多い状態はプールがいっぱいになっている状態とイメージしてみてください。そのような状態でさらに食べ過ぎるとプールが溢れてしまい、血液中に余分な糖質や脂質が流れ込みます。これが、高中性脂肪(トリグリセライド:TG)血症、高血糖を引き起こし、過剰な塩分摂取は高血圧を引き起こします。

内臓脂肪が多いかどうかは簡単に判断できます。それは腹囲、つまりおへそまわり1周分の距離です。男性では腹囲85㎝以上、女性では90cm以上が内臓脂肪増え過ぎの目安になります。

体重も肥満かどうかの判断に使われますが、筋肉量が多い人は体重も多くなったりしますし、皮下脂肪が付きやすい人も体重が増えやすいですが、皮下脂肪が多いことは内臓脂肪が多いことほど問題ではありません。逆に、体重は多くなくても、筋肉量が少なく、皮下脂肪よりも内臓脂肪が多い人は健康とはいえません。

生活習慣病を発症しないためには内臓脂肪(腹囲)を減らすことはとても大切です。そのためには過食を避けることを適度に運動をすることが大切です。内臓脂肪は皮下脂肪と比べると増えやすく減りやすい性質を持っています。生活が悪い(食べ過ぎと運動不足)とすぐに内臓脂肪は増えますが、逆に生活を改善すると、最初に減っていくのも内臓脂肪です。

例えば、運動すると筋肉量増加と内臓脂肪の減少が同時に起きるので、思ったより体重が減る効果は実感できないことも多いですが、健康になる効果はみえにくくても確実にあります。

私の外来を受診する方も、「運動するようになって頑張っているのに体重が減らない」という方が多いですが、「体重が減らなくても運動を頑張っているので確実に健康になってますよ」と説明しています。

確実に打っておきたいワクチン。がんを予防する効果があるものも。

健康のために打っておきたいのがワクチンです。特に健康に問題となる感染症を予防する効果があります。

子どものころに打っておくべきワクチンは「定期接種」といって、すべて無料で打つことができます。これらは、子どもの命を守ってくれるワクチンであり、またその効果は大人になっても続くものもあり、感染症から守ってくれます。確実に打っておくことが必要です。

がんを予防できるワクチンとして、みなさんに知っておきたいものが、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンです。パピローマウイルス感染症は、ほとんどの子宮頸がんの原因となるウイルスで、ワクチンにより予防することができます。小6~高1の女の子は定期接種(無料で打てるワクチン)であり、確実に打っておきたいワクチンです。

HPVワクチンは副作用が疑われる症状(全身の痛みやしびれ)が報告され、積極的な接種勧奨が控えられている状態になっています。しかしながら、その後の研究で、ワクチン接種していない方でも同様の症状が存在し、その発症頻度はワクチンを打っている人と打っていない人で変わらないことが示され、ワクチンの安全性には問題がないことがわかっています。繰り返しますが、「がんの予防」のために、HPVワクチンは確実に打っておきたいワクチンです。

HPVワクチンについて、くわしくは、(みんパピ!)https://minpapi.jp/も参照ください。

健康のためには、正しい情報を手に入れることも重要。

健康を維持するための3つのポイント、禁煙、肥満予防、ワクチン、について説明してきました。多くの人にとっては、目新しい情報はなかったかもしれませんし、「耳が痛い」と思ったかもしれません。でも、タバコを吸いながら「がん」を予防すること、内臓脂肪を蓄積しながら「心臓や脳の病気」を予防すること、そしてワクチンを打たずに「感染症」を予防することは、困難です。

ネットにはたくさんの健康情報が溢れかえっています。もちろんそれはとても良いことだと思う一方で、デメリットもあります。例えば、健康食品やサプリメントについて調べると、(実は販売元がPRしている)いい情報ばかり目にすることになります。その商品に効果がない、あるいは逆効果であるといった情報はなかなか手に入りません。

当たり前の情報は目にしても印象に残りにくいし、ユニークな情報はたとえ正しくなくても印象に残りやすいです。ネットで得られる情報には、自分が欲しいと思う情報や自分の考えと同じものばかり拾ってしまう性質もあります。そのような情報の性質を理解しながら、書かれていることが本当に正しく意味があることなのか判断できるかどうかが問われています。

私は現在、内科医としての外来診療や、健診事業のお手伝いする仕事をしています。いろいろな方と病気や健康についてお話をする機会がありますが、今回紹介した健康のための3つのことは、当たり前のことであるがゆえに(一周回って?)あまり伝わっていない、理解されていない事であると感じたことがこの記事を書いたきっかけです。

最後まで読んでいただいて有難うございました。この記事がみなさんの健康づくりの第一歩になることを願っています。

参考文献/参考サイト

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai17/index.html

http://www.jstc.or.jp/uploads/uploads/files/information/Tobacco%20is%20the%20biggest%20aggravating%20factor.pdf(喫煙歴はコロナ肺炎の最大の悪化因子)

https://minpapi.jp/(みんパピ!)

・禁煙学(改訂4版) 日本禁煙学会編

・第三期 特定健診・特定保健指導ガイド