禁煙なしに健康を維持することは難しい。

なぜかマスコミで報道しているところを見かけない(闇)のですが、タバコは新型コロナウイルスが重症化する最大のリスク因子の一つです。私は○○(日本〇〇〇産業)のドラマ仕立てのCMが何より嫌いです。ひとのときを想う人はタバコを止めようと思うと思います。(言い過ぎだったらごめんなさい)どれだけ配当がよかろうと株は保有しません。

みんなが禁煙すれば、私たち呼吸器内科医の仕事は半分になります。

私は呼吸器内科医として様々な肺の病気の治療にあたってきました。呼吸器内科とは肺や気管支の病気を見る診療科ですが、呼吸器内科の仕事の半分以上はタバコが原因の健康障害、だと断言できます。肺がんの多くは喫煙が原因です。また長年の喫煙による呼吸の障害:COPD(慢性閉塞性肺疾患)はあまり知られていませんが、日本人の500万人以上がかかっていると推計されています。

タバコが原因の健康障害の怖いところは、タバコを吸い続ける限り進行し続けるということです。それも、本人には気づかないように少しずつ進行します。「まだ大丈夫、まだ大丈夫」と思っている間に、取り返しがつかないところまで来てしまいます。

しかし、これらの健康障害はタバコを吸わないこと(禁煙)によって確実に防ぐことができます。肺がんのリスクは禁煙すれば、確実に下がることがわかっています。若いうちに禁煙できればCOPD(慢性閉塞性肺疾患)は発症しませんし、高齢でも進行を止めることができます。

タバコがこの世から無くなれば、私たち呼吸器内科医の仕事は半分になってしまいますが、ほとんどの呼吸器内科医はそれを歓迎すると思います。なぜなら、私たちは呼吸器の病気は進行すると非常に息苦しいとこうこと、そして、息苦しいことは何よりもつらいということを知っているからです。

タバコはがん、生活習慣病、感染症すべてに悪影響

タバコはがん発生のリスクになることがわかっており、それには確固たる証拠があります。

なかでも、タバコによる最も影響を受けるのは、肺がんです。私はこれまでたくさんの肺がん患者を診てきましたが、やはりタバコが原因と思われる肺がんは非常に多いと感じます。肺がん治療は日進月歩で改良されており、治療により生きていられる期間は延びてきているのは事実ですが、残念ながら、肺がんが治る(根治できる)人が増えている訳ではありません。

日本人の3人に1人はがんで亡くなるとされますが、その中でも最も多くの方が亡くなるのも肺がんです。言わずと知れたことですが、タバコは肺がんの最大のリスクです。喫煙者はタバコを吸わない人と比べると肺がんにかかるリスクが3倍以上に高くなります。そしてそのリスクは、タバコを吸う本数が多ければ多いほど、喫煙期間が長ければ長いほど、リスクはどんどん高くなることが知られています。

「これまでずっとタバコを吸ってきたから肺がんになってもしょうがない」と思うかもしれませんが、禁煙すれば肺がんのリスクは減ることも知られていますので、遅くはないかもしれません。思い立ったら禁煙にチャレンジすることをすすめます。

また、タバコは肺がん以外にも約20種類のがんのリスクを高めることもわかっています。呼吸器内科医として実際に診療をしていると、肺がんが見つかったと思ったら、食道がんや大腸がんも見つかった!といった複数のがんが同時にみつかることが珍しくありません。特に喫煙者ではそういったケースをときどき経験しますが、治療は困難を極めます。

がんを予防する(と謳っている)健康食品を摂取するよりも何よりも、がんを予防するためには「タバコを吸わないこと」が最も大切であることは間違いありません。

タバコは生活習慣病による動脈硬化を悪化させる

心筋梗塞や脳梗塞など、動脈硬化による疾患は生活習慣病により発症しますが、タバコはそのリスクを非常に高くします。タバコを吸うこと自体が動脈硬化を直接進行させますし、タバコを吸うことにより生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)も悪化します。

タバコに含まれる有害物質により血管の内側は傷つけられ、そこに血液中のコレステロールなどの脂肪分が集まりかさぶたのようなものが作られます。これにより血管は硬くなり、血管の中は狭くなってしまいます。

また、タバコに含まれるニコチンは血管を強力に収縮させる作用があり、血圧と脈拍を上昇させます。この作用により、高血圧症を発症したり悪化させたりします。また喫煙はHDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)を減らす作用があり、動脈硬化を進行させます。喫煙はインスリンの作用を低下させることで、糖尿病の発症リスクを高くすることも知られています。

まとめると、タバコには「直接血管を傷つける作用」+「生活習慣病を悪化させることで間接的に血管を傷つける作用」の両方があり、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な病気の発症リスクとなります。

タバコを吸っていると肺炎になりやすい

健康な人の気管支の表面にある粘膜は、肺炎の原因となるウイルスや細菌を排除するバリア機能が備わっていて、肺炎になることを防いでいます。タバコに含まれる有害物質は気管支の表面に炎症を起こし、荒れた状態にすることで、このバリア機能がうまく機能しなくなります。その結果肺炎になりやすい状態となります。

また、長年の喫煙により呼吸機能が落ちてしう病気を慢性閉塞性肺疾患(COPD)と言います。特に高齢者多い病気ですが、私は呼吸器内科医としてたくさんのCOPD患者を診てきました。COPDになると痰が増えて出しづらくなります。痰がうまく出せないことで肺炎を繰り返す方も多くみられます。

最近では、俳優の渡哲也さんが肺炎で亡くなられました。愛煙家であったようですが、晩年はCOPDを患い、非常に痩せていたようでした。COPDの方は晩年に繰り返し肺炎にかかりその度に体力が奪われていき、つらい思いをするということを、私たち呼吸器内科医はよく知っています。

最新の話題として、喫煙は新型コロナウイルス感染症を重症化する最大のリスクの一つであること、が報告されています。

禁煙で健康は取り戻せる。

これまで喫煙に伴うリスクについて説明してきましたが、私が一番伝えたいことは、禁煙により健康は取り戻せるということです。

喫煙は様々な病気を引き起こすことで、確実に健康を奪っていきます。喫煙者ではタバコを吸わない人と比べると男性で8年、女性で10年も寿命が短いことが分かっています。しかし、禁煙することでこの寿命はある程度取り戻せます。そして禁煙するのであればやはり早い方がいいと思います。

60歳までに禁煙できた人は、非喫煙者と同じ程度まで寿命が延びるというデータがあります。健康を取り戻すためには、タバコの影響を強く受けるまえにに、元気な間に禁煙することが大切だと考えます。もちろん60歳を超えた方でも、その後自分の体がどんどん悪くなっていかないようにするために禁煙は必須です。

タバコに含まれるニコチンは依存性が非常につよく、タバコは大麻や覚せい剤よりも依存性が強いとされています。止めたくても、イライラして吸ってしまうというのは、依存性が強いためです。私たちはそれをニコチン依存症という病気であると考えています。

そのような場合には、ニコチンパッチやガムを利用することをおすすめします。飲み薬の治療薬もあり、禁煙のためにはとても有効です。お近くの病院やクリニックでは、禁煙治療をしているところがあると思いますので、是非利用していただければと思います。

参考文献/参考サイト

http://www.jstc.or.jp/(日本禁煙学会)

http://www.jstc.or.jp/uploads/uploads/files/information/Tobacco%20is%20the%20biggest%20aggravating%20factor.pdf(喫煙歴はコロナ肺炎の最大の悪化因子)

https://www.copd-jp.com/ 

https://shiga-publichealth.jp/nippon-data/ (NIPPON DATA)

禁煙学(改訂4版) 日本禁煙学会編

LEE, Peter N., et al. The relationship of cigarette smoking in Japan to lung cancer, COPD, ischemic heart disease and stroke: A systematic review. F1000Research, 2018, 7.

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Secretan, Béatrice, et al. “A review of human carcinogens–Part E: tobacco, areca nut, alcohol, coal smoke, and salted fish.” The Lancet. Oncology 10.11 (2009): 1033.